2025.09.04
印刷チャレンジ 〜Vol.13〜【クリアファイル編】
「この素材にも印刷できるの?」
印刷業界にいると、そんな声をいただくことがよくあります。
当社では、UVインクジェット印刷を使って、日常ではなかなか見かけないような素材やアイテムへの印刷実験を積極的に行っています。
今回は、誰もが見たことのある「クリアファイル」に社名の印刷を行いました。
クリアファイルは資料配布などで活躍する定番アイテムですが、透明な素材ということもあり、印刷に少しコツが必要です。
この記事では、準備から印刷、完成までの流れを詳しくご紹介するとともに、透明素材ならではの注意点や工夫もお伝えします。
「印刷っておもしろい」「自分の会社でも作ってみたい」と感じていただけたら嬉しいです。
印刷対象は「透明なクリアファイル」
今回の印刷で使用するのは、文房具として身近なA4サイズのクリアファイル。
素材はポリプロピレン(PP)で、透明な外観をしています。
なぜクリアファイルに印刷するのか?
・社名やロゴを入れてブランディングに
・営業資料の配布時に企業の印象アップ
・展示会や就職説明会などでの配布物に最適
・社内の部署ごとにファイルを分ける用途にも便利
こうした理由から、「透明なクリアファイルへの印刷」は、ノベルティや業務効率化の面でも非常に実用性の高いアイデアです。
印刷前の素材チェックと下処理
素材の性質を確認
今回使用するクリアファイルは、ポリプロピレン製で、インクが弾かれやすい素材です。
そのため、印刷前には以下のポイントに気を付けました。
・表面に油分やホコリがないか?
・湿気や静電気によるゴミの付着がないか?
・反りや湾曲はないか?
ファイルの固定方法と印刷準備
素材が湾曲していたり、角が浮いている状態で印刷すると、インクの乗りが不均一になったり、ノズルが擦れて印刷不良の原因になります。
UVインクジェット印刷では、ノズルと素材表面との距離が非常に重要です。
わずかな浮きや反りでも、インクが正確に着弾せず、ムラやにじみ、かすれが発生する恐れがあります。
また、最悪の場合はノズルが素材に接触してしまい、機械トラブルや印刷ヘッドの損傷にもつながりかねません。
そのため、印刷前には必ず平坦な状態を確認し、必要に応じてマスキングテープや治具を用いて四隅や中央部分をしっかりと固定することが大切です。
こうしたひと手間を加えることで、印刷品質が格段に安定し、仕上がりも美しくなります。
マスキングテープで丁寧に固定
クリアファイルの四隅をマスキングテープで平らに固定します。
粘着力の強すぎないタイプを選び、印刷終了後にきれいに剥がせるように配慮するのがポイントです。
いよいよUVインクジェット印刷開始!
今回使用したのは、当社で稼働中のUVインクジェットプリンターです。
このプリンターは、紫外線を照射してインクを瞬時に硬化させるため、さまざまな素材への印刷が可能です。
印刷設定とデータ配置
・印刷位置:ファイルの左下に社名を印字
・カラー設定:今回は黒1色でシンプルに
印刷位置は、使用時に視認性が高く、かつ主張しすぎない左下寄りに配置しました。
仕上がりチェックと完成品の評価
印刷後、UV照射で瞬時にインクが硬化されるため、乾燥時間は不要です。
出力直後に触ってもインクが指につくことはありません。
印刷品質の評価ポイント
印刷後の仕上がりを確認したところ、以下のような点が評価できました。
・にじみやブレがなく、文字やロゴがシャープに再現されている
・下地が透明であるにも関わらず、視認性の高い印字が可能だった
・ファイルとしての柔軟性や開閉性を損なうことなく、オリジナリティを加えることができた
ただし、表面処理を行わずに印刷した場合、インクの密着がやや不十分となり、爪でこすると一部が剥がれる箇所も見られました。
この点については、印刷前により適切な処理を施すことで改善が期待できます。
実際に使ってみた!
さっそく次の会議で、この社名入りクリアファイルを使用してみました。
社名入りファイルを使うことで、会議資料や配布書類が整理されるだけでなく、企業ブランドの印象向上にもつながることを実感しました。
今回の印刷で見えた課題
インクの密着がやや弱い
今回の印刷は全体的に良好な仕上がりとなりましたが、実際に使用してみる中でいくつかの課題も明らかになりました。
その中でも特に大きな課題となったのは、インクの密着性です。
印刷直後の見た目には問題がなく、発色やシャープさも良好でしたが、印刷面を爪でこすると一部が剥がれてしまう箇所が確認されました。
白インクの有無による見え方の違い
今回の印刷は白インクなしの黒一色でしたが、背景が透けるため見る角度によっては若干見えにくい印象もありました。
今後は、下地に白インクを重ねたうえで黒インクを乗せることで、視認性がより高まることが期待できます。
クリアファイル印刷の応用アイデア
透明ファイルへの印刷は、用途を広げることで様々なシーンに対応可能です。
ノベルティや配布資料として
・展示会・見本市でのパンフレット配布用
・採用イベントでの会社案内ファイル
・顧客向けの販促グッズとしての名入れファイル
業務効率化や管理ツールとして
・社内マニュアルファイル
・部署別管理用ファイル
・機密資料の保管にロゴを入れて明確化
まとめ:透明素材への印刷で見えた課題と工夫
今回の印刷チャレンジでは、ポリプロピレン製の透明クリアファイルにUVインクジェットで社名を印刷し、素材の準備から出力、仕上がり評価まで一通りの工程を実施しました。
見た目の完成度としては、にじみやブレもなく、社名がくっきりと印刷され良い感じでした。
視認性もよく、ファイル本来の機能を損なわずにオリジナル性を加えることができた点は大きな成果です。
一方で、実際に印刷面を爪でこすったところ、インクが部分的に剥がれる箇所があるという“密着不良”の課題も見つかりました。
「見た目は良くても、実用面での耐久性はまだまだ工夫が必要」と、印刷現場としての反省点も記録しておきます。
今後は、実用に耐える耐久性の高い出力条件を追求していきたいと考えています。
失敗から得られる学びは多く、そこから改善策を見出していくことが、私たちの印刷チャレンジの大きな意義です。
今後も実験と検証を続けながら、より多くの「できるかも」を「できた」に変えていきたいと思います。
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