シルクスクリーン印刷の用途は多岐に渡ります。
金属や樹脂、紙、タック紙、成形品や立体物など、その対象物の素材や形状に対しても、幅広く対応しています。
その理由は、シルクスクリーン印刷の自由度の高さにあります。
版は、時には2メートルを超える様な非常に大きな物から、数センチ四方のミニサイズの物まであります。
版に張られている紗張りは、高精度・高耐久のステンレス製からナイロンといった布製のものまで様々です。
紗張りとは、糸が格子状に編まれた布のことで、その糸の素材や糸の太さ、網目の細かさによって多種多様なものがあります。
紗張りに塗られている乳剤も用途によって厚みや種類が色々あります。
乳剤の厚みが薄い場合は、印刷物に印刷されるインクの量が少なくなりますし、乳剤が厚ければ、それだけインクの量も増えて厚みのある印刷になります。
これら版の種類の多さに加えて、使用できるインクも多種多様です。
シルクスクリーン印刷は原理的に、版に垂らしたインクを、紗張りからゴム製のヘラで押し出すだけなので、粘性のある液体であれば、どの様な物でも印刷できるのです。
一般の溶剤系のカラーインクの他に、金紛や銀紛の入ったもの、鏡の様な光沢のあるミラーインク、蛍光色、透明色等があり、対応する版を選べば、糊を印刷することまでできます。
もっと特殊な物であれば、実際に食べることができる色付きのチョコレートも印刷できます。
(カラフルな絵が印刷されているチョコレートのほとんどは、シルクスクリーン印刷によるものです。)
また用途に応じて耐熱性や対候性、耐溶剤性がある物などなど、その種類は非常に多くあります。
これら、版、紗張り、乳剤、インクの組み合わせで実現できる印刷は、大げさに言えば無限といえるかもしれません。
ただし、シルクスクリーン印刷では、その原理上、基本的には1版で1色しか印刷することができません。
なので、色数が多くなると、その色の数だけ版が必要になり、印刷したい色数に比例して、イニシャルコスト(初期費用)がどうしても上がってしまうのです。
また、色数が増えればその分、工程数も増え、一つの製品にかかる印刷コストも上がっていきます。
それに対して、インクジェット印刷はCMYKの4色のインクで一度に印刷できるフルカラー印刷なので、色数が増えてもコストは変わりません。
また、シルクスクリーン印刷では、網点を使った技法でしか実現できないグラデーションが、インクジェット印刷ではデータさえ作ってしまえばいとも簡単に、しかも高精細で印刷することができます。
このようなそれぞれの特性を生かすために、カラー印刷の部分はインクジェット印刷で行い、白印刷や糊印刷といった部分はシルクスクリーン印刷で行うという手法が取られる場合があります。
弊社でも、アクリル製の名札や転写シールのカラー印刷といった用途で、パターンの部分だけをUVインクジェット機で印刷するご注文を頂く場合があります。
もちろん、インクジェット印刷のインクの種類や表現できる色は、使用するインクジェット機に大きく依存し、選択の幅はほとんどありません。
とはいえ、目的とする印刷の種類によっては、これらインクジェット印刷とシルクスクリーン印刷の組み合わせは、非常に大きなメリットを発揮することができる場合があるのです。
これにより、従来のシルクスクリーン印刷のみではできなかった、あるいはインクジェット印刷だけではできなかった印刷を実現することができるのです。