特色分版の基本の考え方
CMYKの色分解による分版は、フルカラーの全ての色をCMYKの4原色に機械的に分解することを基本とします。それに対して、特色分版は、デザインで表現される色ごとに版を作成するものです。
分かりやすい例でいうと、キャラクターデザインがあります。
アニメのキャラクターなどは、領域ごとに特定の色で表現される場合が多く(たとえばポケモンのピカチュウであれば、胴体は黄色、目や口は黒色等)、同じ色で表現されたある領域を印刷する際に、その色の領域の色のインクでベタ印刷を行い、デザインを再現する手法が特色印刷です。
特色印刷で全てを表現しようとすると、当然、色の数だけ版が必要となります。
公開:2026.03.25
なぜ特色分版が用いられるのか
CMYKのプロセスカラーの分版で印刷を行えば、基本的にはどんな色が使われていても4版で全てが事足ります。
それをなぜあえて版数が多くなる特色分版で印刷する必要があるのでしょうか。
それは、特色分版による印刷では、CMYKでは成し得ない、発色の良さや、特色版だからこそ実現できる特殊効果などがあるからです。
CMYKのプロセスカラーによる分版で表現される色は、目的とする色に対して広くカバーすることができますが、特に強調したい色、例えばピカチュウの黄色に対しては、プロセスカラーのイエローを基本とし、それに他のプロセスカラーを微妙に付加することにより特徴的な黄色を表現することになります。
それに対して、特色印刷の場合、様々なインクを混ぜ合わせることにより、目的とする色を印刷に合わせて作り出し、そのインクを使って表現することができるのです。
すなわち、特色分版による印刷では、インクの種類や特性をフルに生かした印刷が可能となるのです。
極端な話、特色分版による印刷では、ある状況下で、蛍光色の黄色が必要であれば、その印刷手法に対して有効な蛍光インクさえ手に入れば、蛍光色の黄色で印刷表現が可能となります。
プロセスカラーのCMYKの分版では、こういった表現は不可能なのです。
また、CMYKの分版では、原色ならばまだしも、CMYKの各成分で表現される色は、全て各色の網点の掛け合わせによるものになるので、どうしても発色の面で弱くなりがちです。
キャラクターデザインの様に、そのキャラクター特有のカラーを強調したい場合などは、特色分版によるベタ刷りが有効となります。
また、特殊効果が必要な場合も特色分版が有効です。
ある領域だけに、グロスのツヤ表現をしたい場合にもその部分の特色版を作成し、グロスニスで印刷することで表現が可能になります。
あるいは、透明の材料に印刷して後ろから光を当てる場合等に、遮光インクを用いて部分的に光を遮り、遮光部分以外を光らせることも可能です。
特色分版のデメリット
CMYKのプロセスカラーによる分版は、基本4版で全ての色が表現可能です。
よって、必要なイニシャルコスト(版代)は4版分となります。
それに対して、特色分版は、表現されている色の数だけ版が必要になります。
したがって、10色で表現されているキャラクターを全て特色版で印刷しようと思えば、最低でも10版のイニシャルコストが必要ということになります。
また、版が増えると言うことは、そのまま印刷工程が増えるということになり、印刷コスト面でも不利になる場合がほとんどです。
特色分版とCMYKプロセスカラー分版によるハイブリッド印刷
CMYKプロセスカラーによる印刷と、特色分版による印刷を組み合わせて、コストを抑えながら印刷表現の幅を広げることも可能です。
たとえば、紙に対する印刷で、ある部分のみ強調するためにツヤありのニスを印刷したい場合、色の表現は全てCMYKのプロセスカラーによる印刷を行い、ニスの印刷のみを別工程の特色分版による版で印刷するといった手法が多く用いられます。
ニスと言った特殊印刷以外でも、特にキャラクターデザインで重要な色のみを特色で印刷するといった手法が用いられる場合もあります。
このように、CMYKと特色分版それぞれには、メリットとデメリットがあるので、それらを補完しながら、最適な分版方法を考える必要があるでしょう。
シルクスクリーン印刷における特色分版
特色分版が特に多く用いられるのが、シルクスクリーン印刷です。
もともとシルクスクリーン印刷は、その技術的特徴から、ベタ印刷が多く用いられます。(もちろん、特色版による網点印刷が用いられる場合もあります。)
シルクスクリーン印刷によるCMYKのプロセスカラーによる印刷も可能ですが、版の紗張りと網点角度の関係からもたらされる網荒れの発生や、紗張りの密度の制約からもたらされる網点線数の限界や再現性の限界などにより、シルクスクリーン印刷は、オフセット印刷やグラビア印刷に比べて、CMYKのプロセスカラーによる印刷には、あまり向いているとは言えません。
それに対して、シルクスクリーン印刷でのベタ印刷は、使用できるインクの種類が非常に多様であること、印刷されたインクの膜厚(インクの厚み)を厚くすることが可能であること、遮光性や発色性を高めて印刷できること、印刷対象となる素材が非常に広範囲であることなどから、多くの場面で用いられる印刷手法です。
シルクスクリーン印刷において多色刷りを行う場合、必要な技術が特色分版です。
これは、シルクスクリーンのベタ版で、目的となるデザインの全ての色を一版ずつ重ね刷りした時に、目的となるデザインを再現するための分版方法です。
領域ごとに版を分けるだけなのですから、単純な様に思われがちですが、ここには技術と経験が必要とされます。
シルクスクリーン印刷における特色分版でまず重要なのが、色ごとの印刷順序です。
印刷対象物に表面から印刷する場合、基本的にはうすい色から印刷を重ねていくのですが、デザインの内容によっては、あえて濃い色を先に印刷した方が、印刷し終えた時にきれいに仕上がる場合もあります。
また、上から重ね刷りする色の領域にも、先に印刷する色をベタで印刷しておいた方が良い場合もあります。
その色順や色の領域の決定には、印刷するインクの種類や色、印刷対象物の特徴などを加味しながら、全ての版を印刷し終えた時のことを見越した経験と勘が必要です。
印刷順序と各色の印刷領域が決まったら、次は版ごとの印刷ずれを考慮した塗り足しの処理が必要となります。
どの印刷手法でも版ごとの色ずれが発生しますが、シルクスクリーン印刷の場合は、特にその版の構造や版に用いられる材料の特性によって、他の印刷よりも版ごとの色ずれが発生しやすくなっています。
印刷が仕上がった時に、不自然な隙間や、塗り足しで重なった色の干渉によって生じる不要な線等が生じる可能性があり、それを考慮した分版作業が必要となります。
このように、領域ごとの分版という一見単純な作業に思われるシルクスクリーン版による特色分版ですが、そこでは、最終的な印刷の仕上がりを見越すことや、シルクスクリーン版の特徴や材料の特性やデザインのイメージまでも考えながら行う必要があり、長年の経験や勘が必要な高度な技術が要求されるものなのです。
まとめ
シルクスクリーン印刷で良く用いられる特色分版には、CMYKのプロセスカラーとは異なるメリットとデメリットがあり、それぞれの分版方法のメリットを生かした分版方法を用いる必要がある。
また、CMYKのプロセスカラーによる分版と特色分版を組み合わせることにより、より低コストで表現の幅を広げることが可能となる。
シルクスクリーン版のベタ刷りによる多色の分版は、領域ごとのベタ刷りなので一見単純に思われるが、そこでは材料やインク、シルクスクリーン印刷の特徴といった知識が必要な高度な技術が必要となっている。




