蔵所写真工芸ニュース 2025年7月号 〜通刊131号〜 サンプル紹介
UVインクジェット印刷は、版を必要とせず、多種多様な素材に高精度で印刷できる技術として、近年ますます注目を集めています。
中でも、透明なクリアインクを活用した「厚盛り表現」は、デザイン性と差別化を求める現場で高い評価を受けています。
今回は、PVC製合皮シートという軟質素材に、厚盛りクリアインクをUVインクジェットで直接印刷したサンプルをご紹介します。
印刷前処理なしでも高い密着性を保ち、テープテストでも剥がれない品質が確認された、実用性のある事例です。
UVインクジェット印刷で重要な「インクの硬さ」
UVインクジェットの魅力は、紫外線で瞬時に硬化させながら、様々な素材に印刷できる点にあります。
しかし、素材に応じたインクの使い分けをしなければ、印刷の品質は大きく低下します。
弊社では用途に応じて、「硬質インク」と「軟質インク」の両方を使い分けられるUVインクジェット設備を保有しています。
・硬質インクは、アクリル板や金属、ガラスなど硬くて変形しない素材に適しており、光沢や細線再現に優れます。
・軟質インクは、合皮や布、軟質塩ビなどの柔らかい素材に追従できるため、割れや剥がれを防ぎます。
特に曲がる素材や屈曲する箇所に印刷する場合は、軟質インクが必須となります。
今回の合皮シートもその一例です。
合皮シートへの厚盛りクリアインク印刷
今回のサンプルで使用した素材は、PVC製(ポリ塩化ビニール)の合皮シートです。
レザー調の質感を持ちながら、柔らかく、様々な形状に加工されやすい素材であり、ノベルティや雑貨、パッケージなど多用途で活用されています。
この素材に対して、弊社では以下の条件で印刷を行いました。
・印刷前処理:無し(プライマー等の塗布なしで素材に直接印刷)
・印刷インク:軟質タイプのクリアインク
・印刷方式:UVインクジェット、2回刷りによる厚盛り処理
・後工程:無し(印刷のみで仕上げ)
・密着評価:テープテストで剥がれ無し(◎)
前処理を行わずに高い密着性が得られることは、製造工程の簡略化やコスト削減にもつながります。
厚盛りクリアインクのメリットとは?
クリアインクは「透明」であるため、素材の色やデザインを活かしながら、ツヤ・凹凸・高級感といった装飾効果を加えることができます。
特に厚盛りにすることで、立体的な存在感が加わり、見る角度によって光の反射が変化するため、視覚的な訴求力が高まります。
厚盛りクリアインクが選ばれる理由
・ロゴやパターンの視認性をアップさせたい
・高級感・特別感を出したい(エンボス的な表現)
・素材そのものの風合いは残したい(透明なので邪魔しない)
・フィルムやシールなどの表面加工代わりに使いたい
たとえば、雑貨やパッケージ、名入れグッズなどに使用すれば、差別化されたデザインを実現できます。
テープテストでも剥がれない密着性
印刷後は、一般的な強粘着テープを使用した剥離テスト(通称テープテスト)を実施。結果、印刷部分の剥がれや浮きは一切見られませんでした。
これは軟質インクと素材の相性が良好であったことに加え、UV硬化による強固な密着が得られている証拠です。
しかも前処理を一切行っていない状態でこの密着性を確保している点は、業務上の作業性を大きく向上させる材料です。
曲げ・引っ張り・擦れにも強い仕上がり
完成したサンプルは、手で折り曲げたり、丸めたり、軽く擦ったりしても、インク層が割れたり剥がれたりすることは一切ありませんでした。
印刷が素材と一体化しており、柔軟な動きにも十分追従しています。
この特性は、実際の使用シーンにおける耐久性を裏付けるものであり、商品の品質保証にもつながる大きな利点です。
どんな商品に活用できるか?
厚盛りクリアインクと軟質インクを組み合わせたこの技術は、次のような製品に向いています。
・名刺入れや手帳カバーなどの合皮雑貨
・折り畳み式のノベルティやパッケージ
・ブランドロゴのアクセントとしての部分印刷
・店頭POPや販促什器での視認性強化
・製品表面の立体的な演出(凹凸表現)
また、UVインクジェットは版が不要なため、1点からの印刷にも対応可能です。
短納期や少ロットの試作にも適しており、開発初期段階での検証にもご活用いただけます。
サンプル配布中!実物を体感してください
今回の印刷サンプルは、実際に手に取ってご確認いただけるように数量限定で無償配布中です。
ツヤ感、厚み、密着性、そして柔らかい素材とのなじみ具合をぜひ実感してみてください。
お申し込みはお電話またはお問い合わせページからどうぞ。ご希望の用途や素材に応じた印刷相談にも対応しております。
まとめ:UVインクジェットで実現する「剥がれない・割れない・高付加価値」印刷
今回の検証により、以下のようなUV印刷条件で優れた結果が得られました。
・材料:PVC製 合皮シート
・印刷前処理:無し(素地に直接印刷)
・印刷内容:軟質クリアインクを使用した厚盛りプリント(2回刷り)
・後加工:無し(印刷後そのまま)
・密着状態:非常に良好(テープテスト合格)
このように、軟質素材×軟質インク×クリア厚盛りの組み合わせは、UVインクジェット印刷における表現力と対応力の幅を大きく広げるものです。
今後も蔵所写真工芸では、さまざまな素材・印刷条件に応じた最適な印刷技術をご提案し、お客様のニーズに応えてまいります。
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